三井物産の脱成果主義への転換に思うこと
日経新聞の記事(5/26)によると、三井物産は2006年4月から脱成果主義の人事制度に切り替えていたとのこと。
成果主義の弊害については(一部誤解も含めて)以前から言われていることですが、
・「人事の公平さを保つ意味で、やはり成果主義の方が社員に分かりやすい、との考え方もある」
・脱成果主義への転換は、足元の収益環境に関係なく可能か
・「締めすぎず、緩めすぎず。どこに均衡点を見つけ出すか」
という記事中の問い掛けは興味深いですね。
記事では、この会社での成果主義の弊害例として、「先輩から後輩へ、マニュアル化できないノウハウを脈々と伝える『人の三井』の強みは、急速に失われていった」と書かれています。
この会社に限らず、個人プレーの成果集計量の追求ではなく、「協働」を通しての成果の追求が組織の基本でしょう。後輩(後継者)を育成したりすることは組織としての継続性を成り立たせていくための土台だと思います。
人事の公平さを保つというのは大事なことですが、記事中の考え方にあるのは、人事の公平さ→社員のモチベーション向上→組織のパフォーマンス向上の図式でしょうか。
つまり、成果主義導入の意義は、人事の公平さを保つ(回復させる?)ことにあり、それが延いては組織のパフォーマンス向上に貢献する。一方、成果主義を導入しその志向を強めると、組織を成り立たせていくための土台が破壊されていく。単純に考えると、パラドックスのようですね。
また、もし収益環境が悪いと成果主義を導入しその志向を強めるしかないのだとすると、これもパラドックスのようですね。
組織の運営や人事制度の手法の適否(有効性)をきちんと評価するには、相当に長い期間がかかるように思います。内部統制環境の問題にまで繋がっている場合もありますし。
日経新聞 2008.5.26
三井物産 成果主義「撤回」 ギスギス職場明るく 追跡 この改革
□改革、契機は2つの不正事件
□評価基準に「面倒見の良さ」
□公平さとのバランス課題三井物産の「定性評価」の主な基準
▽企画立案
・広い視野で先を見通し、構想する
▽実行推進
・人をひき付け、協働する
・信念と熱意を持ってやり遂げる
▽人材育成・指導
・相手を知り、持ち味を認める
・期待をかけ、仕事を任せる「失われた十年」を乗り切るために、多くの日本企業が成果主義の人事評価を取り入れた。だが拙速な改革はきしみを生み、この数年は揺り戻しが起きている。二〇〇六年四月、三井物産は成果主義から、チームワークなどの定性的な情報を軸にする新制度に切り替えた。
・・・
二〇〇二年から〇四年にかけて三井物産は立て続けに大きな不祥事を引き起こした。
何がいけなかったのか。自問自答した鎗田松瑩社長は一つの答えにたどり着く。「稼ぐ社員がいい社員」という成果至上主義に行き過ぎがあったのではないか。
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副作用が顕在化するのは早かった。「業務知識や人脈を他人に教えると損と言い出す人もいて、職場の雰囲気が途端にギスギスし始めた」。
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先輩から後輩へ、マニュアル化できないノウハウを脈々と伝える「人の三井」の強みは、急速に失われていった。
〇六年、二つの不正事件への反省もあり、三井物産は一気に八〇%を定性評価に切り替える抜本改革に打って出た。
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新しい人事評価の基準には、一見、あいまいな表現が並ぶ。
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資源高の追い風で最高益更新が続く三井物産の場合、足元の恵まれた収益環境が「脱成果主義」への転換をスムーズにした面もある。再び収益環境が悪化したときどうするか。人事の公平さを保つ意味で、やはり成果主義の方が社員に分かりやすい、との考え方もある。締めすぎず、緩めすぎず。どこに均衡点を見つけ出すか。三井物産だけでなく、日本企業全体の課題である。
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